「老後のお金、足りるでしょうか。」
ケアマネジャーをしていたころ、ご家族から何度も受けた相談です。
「施設に入ったら、毎月いくらくらいかかりますか?」
「親のお金がなくなったら、私たちが負担することになりますか?」
介護が始まると、多くのご家族は「お金」の不安を抱えます。
それは当然のことです。
介護には現実として費用がかかりますし、いつまで続くのか分からないからこそ、不安は大きくなります。
だから私は、まず介護保険や公的制度の話をしてきました。
「一人で抱え込まないでください。」
「使える制度は遠慮なく使いましょう。」
それがケアマネジャーとしての仕事でした。
でも、たくさんの人生を見送る中で、何度も感じたことがあります。
本当に守りたいものは、お金だけでは守れない。
今日は、その話をさせてください。
おはようございます。うたです。
中3・中1・小3の三姉妹を育てながら、「子どもとお金」についてブログを書いています。
今日は少しだけ、16年以上ケアマネジャーとして働いていた頃に学んだことをお話ししたいと思います。
最初にお伝えしたいことがあります。
私は、お金はとても大切だと思っています。
介護保険制度を利用すれば、サービスの自己負担は原則1〜3割です。
負担が大きくなりすぎた場合には「高額介護サービス費」という制度がありますし、施設では食費や居住費を軽減する制度もあります。
認知症などで金銭管理が難しくなれば、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業を利用できる場合もあります。
そして、「何から相談したらいいのか分からない」というときには、地域包括支援センターという心強い相談窓口があります。
制度を知っているだけで救われたご家族を、私はたくさん見てきました。
だから、「お金なんて必要ない」という話ではありません。
お金は選択肢を増やしてくれます。
介護する家族にも、介護を受ける本人にも、安心を与えてくれる大切な存在です。
でも、それでも届かなかったものがありました。
介護の現場では、不思議なことがありました。
十分な蓄えがあるご家庭でも、「これで足りるでしょうか。」という不安は、最後まで消えませんでした。
どれだけサービスを利用しても、「もっと何かできたんじゃないか。」という家族の罪悪感は残りました。
立派な施設に入っても、「誰かの役に立っている。」という実感を失い、元気がなくなってしまう方もいました。
豪華な個室より、近所の方が「元気ですか」と顔を見せてくれる数分の時間の方が、その人の笑顔につながることもありました。
そして、私が一番印象に残っているのは、全部やってあげることが、必ずしも幸せではないということでした。
認知症と片麻痺のあったA氏のことを、今でもよく覚えています。
県外に住む長男さんは、施設への入所を希望されていました。
「一人では危ない。」
「何かあってからでは遅い。」
離れて暮らしているからこそ、その不安はとても大きかったのだと思います。
でも、A氏は静かにこう話されました。
夫と暮らした、この家で最期までいたい。
その言葉を聞いたとき、私は改めて考えました。
ケアマネジャーの仕事は、施設へ入れることでも、自宅で暮らし続けることでもありません。
その人が望む暮らしを、どうすれば安全に続けられるかを一緒に考えること。
それが私の役割でした。
A氏には、週3回のデイサービスを利用していただくことにしました。
生活リズムを整え、人との交流を続けるためです。
さらに、訪問介護と訪問リハビリも利用することになりました。
そして、金銭管理は社会福祉協議会の支援を利用しました。
安全に暮らすための支援は、しっかり整えました。
でも、一つだけ大切にしたことがあります。
できることは、できるだけ本人に続けてもらうこと。
片麻痺があっても、訪問リハビリで練習しながら薬を自分で服用する。
洗濯物を干す。
近所へ買い物に行く。
デイサービスへ行く準備をする。
もちろん、時間はかかります。
うまくいかない日もあります。
だからこそ、訪問介護や訪問リハビリのスタッフが見守りながら、一緒に「できる方法」を考えていきました。
全部代わりにやってしまえば、もっと早く終わります。
でも、その「早さ」と引き換えに、本人の役割や自信まで奪ってしまうことがあります。
A氏の穏やかな表情を支えていたのは、「今日も自分でできた。」という、小さな達成感の積み重ねでした。
その姿を見て、私は改めて教えられました。
介護とは、「できないこと」を数えることではなく、「できること」を守り続けること。
ケアマネジャーを辞め、母親として子どもと向き合うようになってから、何度も思います。
「あれ?これって子育ても同じだ。」
親は、子どもに失敗してほしくありません。
転ばないように。
困らないように。
傷つかないように。
つい先回りしてしまいます。
でも、それは介護でいう「やりすぎ」と、とてもよく似ています。
全部準備する。
全部決める。
全部助ける。
それを続けていると、子どもが自分で考え、失敗し、成長する機会を奪ってしまうことがあります。
介護も子育ても、相手の力を信じて、必要なところだけ支える。
それが、本当の支援なのかもしれません。
だから私は最近、お金の使い方も少し変わりました。
ただ貯めるだけではなく、「このお金は、誰の力を育てるために使うんだろう。」
そんなことを考えるようになったのです。
私はケアマネジャーとして、多くの人生を見送ってきました。
最後までその人を支えていたものは、通帳の残高ではありませんでした。
住み慣れた家。
「ありがとう」と言ってくれる誰か。
自分でできることが、少しでも残っている毎日。
そんな時間でした。
だから私は今も、お金を大切にしています。
NISAも続けていますし、家計も見直しています。
でも、それはお金を増やすことが目的ではありません。
家族が、自分らしく生きられる時間を守るため。
そのために、お金という道具を使いたいと思っています。
お金は大切です。
でも、お金だけでは守れなかったものがありました。
だから私は、お金を貯めるだけではなく、そのお金で何を守りたいのかを、これからも大切にしていきたいと思っています。
今回の記事を書きながら、何度も思い出した一冊があります。
『経済評論家の父から息子への手紙』です。
お金を増やす方法だけではなく、「お金を何のために使うのか」を考えさせてくれる本でした。
ケアマネジャーとして多くの人生を見送った今、その問いはますます大切だと感じています。
今日も、のんびりいきましょうね。

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