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「私、マーケティングを勉強したい」
高校を選んでいる最中に、中3の長女がそう言いました。
その同じ子が、家で「どう思う?」と聞かれると、黙ってしまいます。
おはようございます。うたです。中3・中1・小3の娘3人を育てています。
今日は、話すのが苦手な娘と、その力をどう育てようとしているかの話です。
「マーケティングを学びたい」と言った娘が、自分の意見は言えない
私は以前、せどりをしていました。Amazonやメルカリで物を売る仕事です。
仕入れて、値段をつけて、売る。うまくいく日もあれば、まったく動かない日もある。その様子を、娘たちはずっと横で見ていました。
そして私は、折にふれて娘たちにこう話してきました。
職種の話ではなく、生きていく上での土台の話として。
その積み重ねがあってのことだと思います。高校を選ぶ段になって、長女は「マーケティングを勉強したい」と言いました。
うれしい、と思う前に、不安がきました。
私が、そう言わせてしまったのではないか。
お金の話をしてきたのは私です。せどりをしていたのも私です。その横で育った子が「マーケティングを勉強したい」と言う。
それは、あの子が自分で見つけたものなのか。それとも、私の背中を見ているうちに、そう言うものだと思ってしまっただけなのか。
進路の話です。誘導していたのなら、かなりまずいことになります。
そしてもうひとつ、前から引っかかっていることがありました。
家で、選択肢を出して意見を求めることがあります。
そういうとき、長女は自分の考えを言うかわりに、親や妹に「どう思う?」と聞き返します。
意見がないわけではなさそうなのです。ただ、出てこない。
学校の先生から聞いてきた話について、思ったことを言えないまま、涙になってしまった場面もありました。
言いたいことがないのではなく、言葉にする前に、気持ちのほうが先に溢れてしまう。そんなふうに見えました。
マーケティングを学びたいと言う子が、自分の意見を言えない。
正直、この子は大丈夫だろうかと思いました。
生徒会では前に立てるのに、家では黙る理由
ところが、です。
長女は、生徒会や学校のイベントでは、自分から役をもらって活動しています。人前に立つことも、引き受けています。
家では黙るのに、学校では前に出る。
どっちなんだ、と思っていました。でも、しばらく見ているうちに、矛盾ではないことに気づきました。
「自分の内側にあるもの」を言葉にすることだ。
生徒会の役には、やることが決まっています。何をどう伝えるかの枠がある。だから動ける。
でも「あなたはどう思う?」には、枠がありません。自分の中を探して、形にして、口に出すところまで、ぜんぶひとりでやることになる。そこで詰まる。
「引っ込み思案」でも「人見知り」でもありませんでした。もっと限定的な、名前のついていない困りごとだったのです。
家で試したら、順番が逆だと分かった
それで、家の中で小さな練習をしてみることにしました。
まずは「家族で出かける場所を、比較して提案してみて」。
結果を先に言うと、失敗しました。
長女の意見が強すぎたのです。妹の出した案に反対して、譲らない。妹も引かない。言い合いになって、その日は行き先が決まらず、結局どこにも出かけられませんでした。
練習のつもりが、休日をひとつ潰しました(笑)
意見が言えない子だと思っていたのに、家族が相手だと今度は強すぎる。母はもう、何を信じたらいいのか分かりません。
ここで、思い出したことがありました。
以前、姉妹でおもちゃをメルカリに出したことがあります。あのとき娘たちは、写真を撮り直して、箱を家じゅう探して、次に使う子のためにきれいに拭いていました。ちゃんと「買う人の気持ち」を考えられていたのです。
あのときできていたことが、家族の中ではできない。同じ子なのに、です。
その少しあと、長女が自分の読み終わった本をメルカリに出品しました。
そのとき、あの子は「この本を買うのはどんな人だろう」と考えていました。その人はどんな内容を知りたいんだろう。写真はどんなふうに撮れば、選んでもらえるんだろう、と。
驚きました。
家族に行き先を提案したときは、あんなに自分の意見を通そうとしていたのに。相手が「知らない誰か」に変わったとたん、相手を知ろうとする側に回っているのです。
家族が相手だと、話は勝ち負けになります。私の案か、妹の案か。通すか、通されるか。
でもメルカリの向こう側にいる人は、言い負かす相手ではありません。何を求めているのかを想像するしか、手がない。だから、あの子は考えられた。
これは、順番の問題でした。
マーケティングというと、上手に売り込む力を思い浮かべます。私もせどりを始めた頃はそう思っていました。
でも実際にやってみると、売れるかどうかは、仕入れる前にほとんど決まっています。誰が欲しがるかを読み違えたら、どんなに丁寧に説明を書いても動きません。
あの子がメルカリでやっていたのは、まさにその手前の作業でした。
そんな長女に、今いちばん合いそうだと思っている本があります。
話し方の本やプレゼンの本を先に渡さなかったのは、長女がつまずいているのがそこではないからです。
人前に立つことは、生徒会でもうできている。足りないのは、その前の「自分の中を探す」ところでした。
話す力を育てる、家でできる6つの練習
ここからは、わが家で試していること、これから試そうとしていることです。
1.「どうだった?」を、答えやすい質問に変える
「今日どうだった?」は、範囲が広すぎて、実は答えにくい質問です。
なので、聞き方を絞ります。今日いちばん印象に残ったことは? 良かったことと変えたいことを、ひとつずつ挙げるなら? AとBならどっち、その理由は?
お店やサービスの話なら、「もし自分が店の人なら、どこを変える?」「友達に勧めるなら、なんて紹介する?」も使えます。
枠があると、答えが出てきやすくなります。生徒会で動けるのと、たぶん同じ理屈です。
2.答えが出るまで待つ
沈黙が続くと、親はつい先回りして答えを言いたくなります。
でも、じっくり考えるタイプの子にとって、その沈黙は「考えている時間」です。
「今すぐじゃなくていいよ」「あとで聞かせて」と伝えておくだけで、急かされずに言葉を探せます。話す時間だけでなく、考える時間も要る。
これが、私にはいちばん難しいです。待てません。
3.意見を否定せず、まず受け止める
子どもが意見を言ったとき、すぐに「でも」「それは違う」と返してしまうと、次からは正解を探すようになります。
まずは、内容に興味を持って聞く。
「どのへんからそう思ったの?」
「もう少し聞きたいな」
賛成しなくてもいいのだと、最近やっと分かってきました。違う意見でも、言って大丈夫だった経験さえ残れば、次の一言につながる気がしています。
4.伝え方の「型」を、ひとつだけ教える
最初から上手に話す必要はありません。まずはこの3つだけで足ります。
- 私は○○だと思う【結論】
- なぜなら○○だから【理由】
- たとえば○○【具体例】
気持ちや希望を伝えるときは、「○○があって、私は○○と感じた。だから○○してほしい」という言い方も使えます。
型があると、頭の中を順番に並べられます。この並べ方をもっと詳しく知りたければ、『13歳からのプレゼンテーション』(松永俊彦 監修・メイツ出版)が中高生向けに丁寧に書かれています。学校の発表だけでなく、面接や商品の紹介にもつながる内容です。
5.家庭の小さな決定を任せる
出かける場所を比較して提案する。予算内で夕飯を決める。二つの商品を比べて、どちらを買うか説明する。
特別な教材はいりません。
ただし、さきほど書いたとおり、わが家はここで盛大に転んでいます。家族が相手だと、意見を通す戦いになってしまう。
今なら分かります。順番が逆でした。
6.営業役より先に、「お客さんを知る役」をやってもらう
営業力というと、上手に説明する力を思い浮かべます。でもその前に要るのは、相手を知る力のほうでした。
親がお客さん役になって、子どもに質問してもらいます。何に困っているのか。何を重視するのか。予算はいくらか。いつ使うのか。
それを聞いてから提案する。この順番だと、押し売りになりません。
長女がメルカリでやっていたのは、まさにこれでした。誰も教えていないのに、相手の顔が見えない場所では自然にできていた。
だったら家の中でも、その順番でやればよかったわけです。
毎日やると家が面接会場になる。週1回10分で十分
ここまで書いておいてなんですが、これを毎日やる必要はないと思っています。
会話のたびに「理由は?」「具体的には?」と聞かれたら、家が面接会場になってしまいます。それはさすがに、子どもも疲れる。
週に一度、これくらいで十分です。
- 気になった商品や出来事を、ひとつ選ぶ
- 1分で、自分の意見を話してもらう
- 親からの質問は、ひとつだけ
- 良かったところを、ひとつ伝える
気をつけたいのは、声の大きさや話す速さだけを褒めないことです。
「理由が分かりやすかった」「相手の立場を考えてたね」。中身のほうを、具体的に認める。
子どもの話す力を「考える・伝える・見せる」の段階に分けて育てるという考え方は、『すべての子どもに「話す力」を』(竹内明日香 著・英治出版)で詳しく紹介されています。親や先生の側が、子どもの中にある「言いたいこと」をどう引き出すかという視点の本です。
話し上手にしなくていい。足りないのは技術だけ
長女は、社交的で話し上手なタイプではありません。
でも、納得するまで考えます。納得したことは続けます。相手の顔が見えない場所でなら、その人が何を欲しがっているかを想像できます。
せどりをしていた頃、私が毎日やっていたのも、結局そこでした。
足りないのは性格ではなくて、考えを相手に届けるための、ちょっとした技術のほうです。そっちなら、練習でどうにかなります。
最初に書いた不安——「私が言わせてしまったのではないか」は、正直、今も消えていません。
でも、確かめる方法がひとつだけあります。
あの子が自分の言葉を持てるようになったころに、もう一度聞いてみればいい。「なんで、マーケティングだったの?」と。
そのときの答えが、あの子自身の言葉で返ってくるなら。それでいいと思っています。
私は、あの子を「話せる子」に変えたいわけではありません。
考えてから話しても大丈夫だと、あの子が思える場所をつくりたいだけです。
今のところ、休日をひとつ潰した実績しかありませんが。
あなたのお子さんは、「どう思う?」と聞かれたとき、すぐ答えられるタイプですか。それとも、少し時間がかかるタイプでしょうか。
この記事で紹介した3冊
順番に、子ども本人・伝え方の型・親の関わり方の本です。全部そろえる必要はなくて、お子さんが今どこで詰まっているかで選んでもらえたらと思います。
・『気持ちを「言葉にできる」魔法のノート』梅田悟司(日本経済新聞出版)
・『13歳からのプレゼンテーション』松永俊彦 監修(メイツ出版)
・『すべての子どもに「話す力」を』竹内明日香(英治出版)
※本記事にはAmazonアソシエイトのリンクが含まれます。
- 「話せない子」ではなく、自分の内側を言葉にするのが苦手な子だった
- 家族が相手だと意見の戦いになる。知らない相手だと、相手を知ろうとする
- 自分の意見を言う練習より、相手を知る練習のほうが先だった

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